2015年10月15日木曜日

複合社会へ向かって!

しかし、これまで述べてきた視点に立つと、次の人口波動を担う生産・分配制度は、単に互酬制へと回帰していくのではなく、肥大した市場交換を抑制しつつも、再配分、互酬、家政の諸制度をほどよくバランスさせた「複合社会(complex society)」へ向かって徐々に進んでいくことが期待されます。

企業や資本家だけが闊歩する市場交換制度、社会主義国家や福祉国家のような再配分至上制度、家族や集落の相互扶助だけに頼る互酬中心制度、個人や家族内だけで生産・使用する家政主導制度の、いずれの1つに偏るのではなく、4つの制度を4つとも存続させながら、それぞれのバランスをとっていくという方向です。

あるいは、移りゆく時代の変化に応じて、その組み合わせの比重を変えたり、あるいはそれぞれの内容を微妙に変換していくこと、といってもいいでしょう。

こうした方向を生活構成論(生活学)の立場から再確認しておきましょう。詳しい説明は、別のブログ(生活学マーケティング)で展開していますので、ここをご覧下さい。


生活構成論では、私たちの生活の基本的な構造を、縦軸(言分け⇔身分け)横軸(ラング⇔パロール)マトリックスとして把握しています。


このマトリックスに、K.ポランニーの主張する4制度を位置づけてみましょう。

家政:個人や家族がそれぞれの生活のために行なう、自給自足的な制度であり、横軸では個人生活から共生生活まで、縦軸では感覚・象徴的な願望から機能・性能的な願望や理性・記号的な願望までを対象にしています。

互酬:贈与、遺贈、寄贈などの互恵行為を、言語以前の欲動次元に基づく象徴交換制度から始まっています。

再配分:首長制度や王権国家などに始まる制度であり、一方では国家による租税や公的年金・保険などの公的負担、他方では生活保障や年金・保険などの給付を、それぞれ理性や理念という高度にコト化された言語次元で制度化したものです。

交換:個人や家族がそれぞれの生活を営むために行う、他者との交換行為であり、物々交換から始まって初期商業交換、そして市場交換に至るまで、共生生活から社会制度のクロスする分野で、モノ次元を中心にコト次元まで広がっています。

以上のような位置づけを、歴史的な変化として描き出してみると、次のような展開が見られます。

石器前・後波~農業前波では、横軸の社会制度や共生生活の分野で、「再配分」が記号的・理知的な制度として、また「互酬」が感覚的・習俗的な制度として、それぞれが位置づけられます。さらに個人生活から共生生活にまたがる分野では、「家政」が個人や家族の自律的・自給的な制度として存在します。




農業後波になると、「再配分」と「互酬」の間に「交換」が割って入ります。初期的な商業交換ですが、「交換」という行為は、モノの価値の上下を合理的に判断するものですから、機能や性能を重視する欲求次元を中心に上下に広がります。




工業前波になると、「交換」が肥大して「市場交換」となり、「再配分」や「互酬」を、さらには「家政」までも押しのけるようになっています。

とすれば、次の工業後波では、市場交換、互酬、再配分、家政の諸制度がほどよくバランスした「複合社会」に向かって、3つの調整が必要になってきます。

つまり、第1は市場交換の縮小に比例した、適度な領域へ向かうこと、第2は再配分の適正化に応じて、税金や社会保障などとの関係を見直すこと、そして第3は互酬制の拡大に応じて、贈答、贈与、寄与などの生活行動と一体化をめざすこと、の3点です。


工業後波という新たな波動では、より複合化の進んだ生産・分配制度が期待されます。

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