2015年2月24日火曜日

抑制行動は遺伝的、生得的に発動する!

①~④の行動をさまざまな動物が意識的、あるいは意図的に行っているわけではありません。
 
動物たちは、キャリング・キャパシティーが満杯に近づくと、これらの行動を自動的に開始しています。というより、キャパシティーが上限に近づく前から徐々に始めています。これは一種の予知能力ともいえるものですが、どうしてそんなことができるのでしょうか。

いうまでもなく、動物たちが人間と同じような、理性的な予測能力を持っているとは思えません。にもかかわらず、これらの行動が自然に行われるのは、環境汚染の度合い、食糧獲得の難易さ、お互いの接触回数といった環境変化が進むにつれて、それぞれの種に予め備わった遺伝的なしくみ、いわば「個体数抑制装置」が自動的に作動し、生理的に反応してしまうからです。

ここで「装置」と書いたのは、抑制のしくみがさまざまなメカニズムで成り立っており、一種の「機械」や一定の「機構」と同じように、予め準備されていて、必要な時に必ず作動し始める、という意味です。
 
例えばハツカネズミやサルといった哺乳類でも、個々の動物が生息環境の制約を意識しているわけではありません。それぞれの群れの中で接触頻度や競争関係が濃密になってくると、各個体の内部でも次第にストレスが高まり、それとともに遺伝的に組み込まれていた行動が呼び覚まされて、共食い子殺といった激しい行動へ突っ走るのです。


つまり、キャリング・キャパシティーへの対応行動は、個々の個体の意思や反応というよりも、遺伝的、あるいは生得的(生れつき生体にそなわっている)な行動様式に基づいている、といえるでしょう。
 
  (詳しくは古田隆彦『日本人はどこまで減るか』)

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