2015年5月14日木曜日

減少促進策はすでに実施されている!

政策的な抑制策には、人口を減らしていく減少促進政策もあります。

人口を減らすというと、いわば退行的な政策ですから、表立って宣伝されることはありませんが、日本の現状を注意深く見つめてみると、すでに幾つかの分野で、このような政策が始まっています。代表的な政策が、長寿者向け社会保障制度の縮減です。幾つかの事例をあげておきましょう。

後期高齢者医療制度の負担増・・・75歳以上の「後期高齢者」だけを独立させて医療給付を集中管理するという、他国にはほとんど類を見ない政策として、2008年4月に始まった、この制度は、2年ごとに保険料金(全国平均)の引き上げを繰り返してきました。このためか、保険料を払えずに滞納した75歳以上の人は約25万人にのぼり、正規の保険証でない、有効期間が短い短期保険証を交付された人は2万3千人に達しています。それにもかかわらず、厚生労働省は2017年度から、所得の低い人の保険料軽減措置を段階的に撤廃する方針を打ち出しています。現在は低所得者や、会社員や公務員の扶養家族である人の保険料は最大9割を軽減されていますが、この特例措置を2017年度から原則として廃止されます。対象者は、75歳以上の約半数に当たる865万人に達する見込みです。

介護保険料の負担増・・・2000年から施行されてきた介護保険制度では、65歳以上の保険料が市区町村ごとに、介護保険サービスの公定価格・介護報酬が改定される3年ごとに見直されてきました。2015年4月に改定された65歳以上の介護保険料は、全国平均で月5514円、542円(10.9%)上昇しました。今後、全国平均の保険料は、2020年度には月6771円、2025年度には月8165円にまで上昇していくと見込まれています。

介護保険・特別養護老人ホーム等費用の負担増・・・介護保険の給付についても、2015年8月から、所得や資産が一定以上ある人や世帯を対象に、特養入居費などの自己負担額が大幅に上がります。これまでは、住民税非課税世帯などが特養などの入居、ショートステイ費用に入居する場合、その所得に応じて3段階で軽減されてきました。しかし、8月以降は、住民税非課税世帯であっても、預貯金と有価証券(時価)の合計額が、単身者1千万円、夫婦合計2千万円を超えると軽減から外されます。自己申告した預貯金額を市町村が金融機関に照会して虚偽と分かった場合には、不正受給額の3倍を支払わなくてはいけないという罰則も設けられました。
さらに夫婦の住民票を2つに分ける「世帯分離」で認められてきた軽減制度も制限されます。夫婦が別の世帯になると、どちらか一方の住民税が非課税になるケースがありましたが、8月以降は世帯分離をしても、夫婦のどちらかが住民税の課税者であれば軽減を認められなくなります。2016年8月以降は、本来は非課税の遺族年金と障害年金の受給者も、他の年金などとの合計額が住民税の課税水準に達していれば軽減対象から外されることになります。


年金が減額される一方、医療・介護などの負担が膨らんでいけば、長寿者の生活はますます苦しくなっていきます。それが意味するのは、間違いなく死亡率の上昇です。

当ブログの1月6日(http://jingenblog.blogspot.jp/2015/01/blog-post_19.html)で述べたように、2010年から2013年にかけての人口減少数76万人の要因は、死亡数増が44%、出生数減が37%、社会減が19%ということになります。つまり、人口減少の最大の理由は死亡者の増加なのです。

高齢者向けの医療・介護保険制度の負担強化は、財政健全化には避けて通れない課題かもしれません。


しかし、人口政策という視点から見れば、長寿者の生活を圧迫することによって、結果的には死亡者を増やし、人口減少につながっていきます。

そうした意味で、これらの政策は減少促進策の典型といえるでしょう。

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